酔芙蓉

実家に帰省した。毎年盆と正月は片道三時間かけて帰ることにしてるくらいしか親孝行と言えるところがないドラ息子だが、まぁ資産運用の指南をしたり時計の修理をしたりする分にはそれなりに役には立っているのだろう。こちらは紫陽花が終わりかけ、芙蓉と百日紅が満開で庭の彩りも豊かである。もうちょっと山の方に行けば凌霄花もまだ現役。花の名前を覚えるようになってからは実家の庭を探検するのが結構楽しい。小さい頃の目線とはまた違ったところから植物を眺められて新鮮な気持ちがある。

実家は東京と違って空も広く空気もきれいで良いのだけれど、控えめに言ってものすごく暇。おかげで読書と映画とツイッターが捗った。例に漏れず車社会だが、車に乗っても大して出かける場所がない。これはこれで好きなんだけどまぁ三日いたら飽きると思う。

 

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迎え盆には少し早いが墓参りもした。この春に祖母が亡くなったので少しだけ感慨に浸る。うだるような暑さの中で四面楚歌のようなサラウンドの蝉の声を耳にしつつ線香を焚いて手を合わせる。自分は大して宗教的でもないと思うがこの一瞬は結構好きだ。自分の胸で縁起を反芻する行為と位置付けている。

 

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うちは田園地帯で見渡す限り水田ばかり。隣家まで一体何百メートル離れているのだろうか。夏はすくすく育つ水稲の群れを目にすることになるので心地よい風景だが稲刈り後はうら寂しいもんである。若山牧水の歌に「山河みな古き陶器のごとくなるこのふるさとの冬を愛せむ」というのがあるけど自分はここまで冬のふるさとを愛せないと思う。やっぱりあたたく賑々しい夏の光景が好きだ。