旅の港

先週末京都に遊びに行ってきた。夜行バスで押しかけナインアワーズ(カプセルホテル)に泊まる何だか学生みたいなプランで攻めてみた。帰りはグリーン車でゆったり帰るっていう節約なんだか無駄遣いなんだかわからない一泊二日一人旅。

夜行バスで行ったので朝の時間を有効に使えたのはとても良かった。早朝から南禅寺の三門と水路閣を独り占めできて幸先良いスタートを切り、いつもの流れで鴨川へ。昨年秋も京都を訪れているがこのときは嵐山中心だったので鴨川は約二年ぶり。まだ涼しい時間帯だったので橋の影でクンデラの『冗談』を読んだり、鴨川を下る鴨一行を写真に収めたりした。

旅の一挙手一投足は端折ることにするけど、二日間の弾丸ツアーの割に美術館に行ったり京大に行ったりできたし、目的だった阿以波のうちわも手に入れたので大分QOLは高まったと思う。

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個人的にはこの旅の夜が印象的だった。毎年のように寺町通を下ったところにあるバーを訪れているが、そこで出会った常連さんらしき人と少し話をした。太秦から来ていると言っていたから、もしかすると芸能関係の人なのかもしれないが、火野正平からの受け売りとして大筋こんなことを話してくれた。曰く、どこを旅するにしても港となる場所が必要だと。火野正平はいわゆるプレイボーイみたいな人間だから、女のことかと思ったがどうやらそうとも限らないらしい。火野がその常連さんを連れ立って行った「港」は、こじんまりとしているが、しかし趣のよい飲み屋だった。羽根を伸ばすにも錨をおろす港がなければ始まらない。君はここを京都の港にしたらいいと。

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ほろ酔いで半ばぼうっとしながら聞いていたけれど、後から考えるとよい話を聞けたなぁと思う。自分の旅は思えばどこに行っても港があった。それは火野正平やその常連さんの語るほどには格好よい場所ではないが、ニューヨークに行ったときは、近所のまずい中華デリとコインランドリー、パースではスワン川のほとり、Mill Pointからの景色が自分の立ち位置を再確認させてくれるトーテムのようなものだったと思う。行く先々でそんな素敵な場所に出会えるということはとても素晴らしくて、それだけで旅のしがいがあるし、またそこに訪れたくなる理由にもなる。そういうわけで京都なんかは必ず年に一度は帰る場所になっている。

次は秋にもう少しゆっくり来たいと思う。

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これはムクゲかなー。