オペラ

2月22日東京芸術劇場で公演されたオペラ「ラ・トラヴィアータ」を観劇した。オペラ観劇は生では今回が初めてで、観ようと思ったきっかけは矢内原美邦さんが演出だったから。矢内原美邦さんは以前のエントリーでも触れているけど演劇とコンテンポラリーダンスの人。オペラ界隈にとっては馴染みのない演出家ということになると思う。他人の評から先に言うと、カーテンコールで指揮者・出演者に対して拍手喝采とBravo!が繰り返される中、この人が出てきたときだけブーイングが起きた。さもありなん、というのは公演前からある程度想像していたことだったが、個人的にはとても良かった。もちろん出演者も指揮者、演奏は文句のつけようがないくらい(特にアルフレード役の宮里さんは素人目ながら素晴らしい声だと思った)だったけど、1幕の夜会で揃って登場するシーンからもうね、矢内原さん「らしさ」が存分に感じられてヤバいヤバいって思いましたよ。何でヤバいのかっていうと、上流階級趣味のクラシックなオペラと、ある種アングラ味のある演劇って完全に袂が別れてるんです。その異分子同士を持ち込んだらどうなるか。シナジーとかいう聞こえのいい表現ができたらそれは良いだろう、しかしそこにあるのは「ぶちこわし」これだけ。予定調和の文脈をぶった切って観客我に返る。はて、自分は今、いったい何を観に来ているのか?そう思わせたら勝ちなんですよ。上流と下流、見るもの見られるものの関係性は常に一方向ではないし、複層的なものでもある。そういうメタな視点を与えることがこのオペラの裏にあるテーマでもあると思うのだ。何か真新しいことをやろうとしてやりきれず、失敗した、意味不明、そういった意見もあると思う(特にオペラが好きで観に来た人ほどそうだろう)けれど、少なくとも個人的には実験的かつ現代に即した素晴らしい演出だと思った。何度も言うけど出演指揮演奏衣装全部良かったよ。あとオペラは金ケチらずS席で観るべき。次はオペラ座でオペラを観よう。


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