黄昏空

夏の夕暮れ時の上野公園が好き。数年前根津に住んでいた頃は自転車で不忍池の裏を抜けて上野公園に向かうのが暇な夜の定番コースだった。あの頃スターバックスコーヒーみたいなカフェはまだオープンしていなかったから、自販機で買ったアイスコーヒーを片手に動物園の表門側に陽が沈むのをよく眺めていた。

日曜夜のここは時間がゆっくりと流れていて休日の終わりを延長できるような感じがする。上京してもう10年近くになるけれど、田舎生まれの自分にはまだたまに満員電車だとかあふれる人とネオンサインのような都会のシンボルに胸焼けする瞬間がある。そういうときこんな風に大きな公園があるのはオアシスっぽさがあって愛を感じる。そういう意味で東京も意外とよくできた都市なのかもしれないなーと思う。

不忍池の周りも高層マンションがちらほらと並ぶようになって大分変わってきた。冬の風景も好きだけどやっぱり夏の生命力が爆発した感じは見応えがある。

都会で細々とサラリーマンを装いながら週末のたびにリバイブするテキトーな生を送っているが、日々面倒くさいこともあるけれどこれはこれで概して悪くない人生だなーとか、そんなことを考えさせる、ありふれてはいるけれどきれいな夕暮れだった。