夜の帳

久し振りに寝ずに夜を明かすとちょっといけないことをしてしまった気分になる。常態化してしまうと実感に乏しくなるのでたまにがベスト。それは呑み明かすでも踊り明かすでも映画を観たおすでも良い。真夜中の墨色が溶けて朝が薄青く滲んでくるその瞬間に立ち会うのは何となく胸が高鳴る思いがする。好きな人と毎晩朝まで電話して翌日フワフワとした頭で出社するみたいなのが日常だった頃を思い出す。今となってはいい思い出なのか悪い思い出なのか定かではないが自分の歴史である。私という人間のライフヒストリー。そういえば部屋の梔子はいつの間にやら部屋の植栽で最も長い付き合いになる。地元の花屋で買った小さな鉢はワンサイズ大きなものに植え替えられ、華奢な主軸も心なしか自信ありげな幹になった。もうそろそろまた大きな鉢に植え替える必要があるだろう。この梔子も私のライフヒストリーの一部を形づくってくれているのだろう。エアコンの風にあてられたのか、野生より一足早く蕾がいくつか見える。花の香り溢れる初夏が自分の部屋にだけ訪れるのは何とも贅沢だと思う。

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