春の夜

以下は2020年3月22日に書いたもの。当時は文章にまとわりつく重苦しさに耐えかねて投稿をするのをやめていたけど、気持ちも少し落ち着いてきたので当時の記録として残しておく。

 

"外は生暖かく強い風が吹いている。もう桜も満開だというのに週末は雪が降るらしい。土日に迫る外出自粛を目前に人々は心なしか浮き足立っているように見える。目に見えないすりガラスの影は灰色の雲となって人々の心を分厚く覆っている。

 

オリンピックが延期になり、自分の海外赴任の予定も同様に延期になった。もう荷物は倉庫に手配してしまったので部屋には冷蔵庫も洗濯機もない。この部屋も一週間もしないうちに出ていかないといけない。このご時世に住む家を持たない根無し草になるのは笑えてくる。まぁそんなことはこの世界の重大な転回からすると全く意味を成さないほどに小さいだろう。とはいえ、自分一人の行動が、何千何万と枝分かれし浸潤していく病の一端になっている(それも知らず知らずのうちに)としたら、それほどに末恐ろしいことはない。"

 

灰色の雲は相変わらず世界を覆っていて、光の兆しすら見えないような状況の中を生きている。人のいない街で季節だけが時計の針を進めている。

 


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