春の歌(一)

春の京都には初めて訪れた、と思う。

記憶に残っている限りの最初の京都は十数年前のゴールデンウィーク興戸にある姉のアパートを訪れたときで、どちらかといえばもう初夏のような陽気で青々とした竹林の中を自転車で駆け抜けた思い出がある。それ以降の京都はだいたい大学生の夏休み、社会人になってからは夏と秋が多くて春と冬を経験したことがなかった。初めての春は桜の咲き始め、雪柳と連翹の繚乱たる季節である。朝晩は冷え込むが昼間の暖かさが本当に心地よい。地獄のような夏の暑さの中歩く京都の街もまた味わいがあるが、穏やかさと平和さしか感じられない華やかな京都もまた美しいものだと思う。

鴨川にはそこに人々を居つかせてしまう何とも不思議な魅力があって、これは(個人的には)多摩川隅田川に感じられない特有のものだと思う。人間だけではない。さまざまな鳥たちも空で川で楽しそうに饗宴を催している。それを感じさせるのが一体どんな要素なのか因数分解してみたい気持ちもありつつ、いっぽうで謎の数式の様相を保っていてほしい感じもあり、なかなか答えにたどり着くことができない。とにかく鴨川はよいものだし春の鴨川はさらによいものである。夏の魅惑にも気圧されないあたたかな魅力というべきか。

三文字タイトルは今回の旅の港でもある出町柳にしようかと思っていたけれど、たまたま聴いていた歌のタイトルを勝手に拝借した。一度に書ききるのは勿体ないので続きはまた今度。

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