浅煎り

東京の夜景は好きだ。思い出すたび、何度でも見に行きたくなる。地元で育った年数と、東京に来てからの年数が段々と近くなっていくけれど、それでも田舎者の感覚は抜けないのか、夜景を見るたびに新鮮な気持ちになる。とはいえ、最初に見た頃のような感動をうけることはもうないのだろう。それは夜景だけでなく、風景一般に受ける印象として言えることだし、小説や映画に対してもそうだ。

心に届くまでの距離が遠くなっている。あるいは、心に届くまでの分厚いフィルターに、刺激的な情動のほとんどを濾しとられてしまっている。

それは多かれ少なかれ、自分に限ったことではないだろうと思う。ある程度加齢に伴って情動の幅は狭くなってゆくものだ。だからそういった「良い」感情だけではなくて、不安や恐れなどのストレスも受けにくくなっていくのだと思う。涙を流せなくなってきていることを寂しく思うことはあるけれど、昔よりは肯定的に受け止めることができている。

 

夜景の話に戻ろう。

個人的には、東京の夜景に東京タワーは欠かせない。何となく冬は特に。東京タワーを間近で眺めるのも大好きだけど、東京タワー展望台に上ると東京タワーそのものを見ることができないジレンマがある。以前も東京タワーに触れたエントリーを書いたけれど、いつの間にか季節が変わり照明も冬色に衣替えした。

東京タワーを中心に据えるならば、最もタワーの間近で夜景を楽しむことができるのは東京プリンスホテルだと思う。上層階にバーがあるので宿泊客でなくとも気軽に夜景を見に行くことができる(少し交通の便が悪いというか、周りに何もないのが難点)。行きやすいところでは、その次に六本木ヒルズが近い。展望台からバッチリ見えるし、けやき坂のペデストリアンデッキから眺めるのも良いだろう。スカイツリーからももちろん見えるが大分サイズは小さくなる。他にも虎ノ門ヒルズやマンダリンオリエンタルなど沢山のビューポイントがあり、それぞれがそれぞれの東京タワーの表情を見せてくれる。ここ数年でますます高層ビルが乱立しているが、東京タワーは相変わらず個人的な東京のランドマークだ。


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